べんきょうしよう

映画と音楽とアイドルと

【ドラマ】「過保護のカホコ」4話 感想

カホコを観ながらTwitterを触っていると(集中しなさい)こんなツイートを見かけました。

 

 まとめる必要があるほど奥行きのあるツイートかどうかはわからないですが、togettterにもまとめられていました。意外と発信者の意図が読めていない人ばかりで驚いた。こち亀の不良の話みたいなものだよね。

 

togetter.com

 

 

 

さて。

 

過保護のカホコ

 

あらすじ(第4話)

カホコ(高畑充希)と泉(黒木瞳)の固い絆が崩れ、正高(時任三郎)は冷戦状態の2人の板挟みにあう。初(竹内涼真)からフラれ、人生初の失恋に落ち込むカホコは、立ち直る方法を探すが…。正高の提案で気分転換のために泉の実家を訪ねたカホコは、初めてお酒で酔い、そのまま初のもとへ向かう! 

 

脚本家の遊川和彦氏は、これまで一貫して「愛」について描いてきました。

その描き方は、良く言えばダイナミックでセンセーショナルなのですが、悪く言えば大袈裟で短絡的で品がないので、個人的にはあまり好きな作家ではないのですが(悲劇を描けば良いと思っている節がある)、が、この作品はここまで比較的面白く観ています。特に今回の4話が良かった。

 

それは勿論、高畑充希の顔を見て泣きそうになる竹内最高涼真と、

f:id:yama51aqua:20170806014850p:plain

(鼻がピクッ、って動くのだけど画像じゃわからない)

 

 

 

f:id:yama51aqua:20170806014829p:plain

カホコ「この世界で、家族以外にも自分を必要としてくれる人がいて、いつでも会いたい、って思ってくれるのって、こんなに嬉しいんだね。なんか、あたしも生きてていいんだよって言われてるみたいで。」

 

 

笑顔になって駆け出していく充希が素晴らしかった。

 っていうのもあるのだけれど、それはあくまで副次的要素。

 

 

要点

 

 

パパがプッチンする

ドラマはさっきの幸福なシーンで終われば良いのだけれど、まぁ遊川和彦がそうするわけもなく。(動画)

 

youtu.be

1:45〜  再生していただけると)

 

 

私は大きなテーマを描いている遊川さんはあまり良いとは思いませんが、こんな感じで「父親の悲哀」みたいなものの描き方は非常にうまいと思います。

これは代表作「家政婦のミタ」でもそうだった。

 (シチュエーションなどは大きく違うけれど、描き方がよく似ている。台詞も似ている。)

 

 

1話から、エンターテインメントとしてカホコ(高畑充希)と麦野くん(竹内最高涼真)を描き、ドラマとしての実験*1をしつつも、裏では家庭内で話を聞いてもらえない父親、阻害される父親、空気のように扱われる父親(正高=時任三郎)を描いてきました。脚本家本人の年齢がそのあたりなのもあるのか、そこの微妙な感覚はとても上手いです。*2

 

家を支配する母親(泉=黒木瞳)。娘も支配する母親(勿論、愛情があってのことですが)のため、過保護に育てます。このような場合、だいたい娘が現実を知り反抗期が来て(のように聞きます)親離れするのですが、このドラマではその年齢が遅く設定されています。(大学4年生)

正高は、過保護ではいけない、と感じていますが、母親とは異なる理由で過保護にしてしまいます。娘と母親の間に存在する絆めいたものを、正高は感じることができていないためです。絆が感じられないため、娘に好かれたい、嫌われたくない、という気持ちが要因でつい過保護に接してしまいます。

 

第4話では、麦野へ恋愛をしたことから反抗期を迎えたカホコと、泉との喧嘩の間、なんとか立ち回る正高が描かれています。双方に気を使い、理不尽な頼みを聞き、なんとか問題解決の方法はないか探っています。その癖、彼自身の文句は”心の声”という方法で表現され、当該のシーンまで直接表明されることは少ないです。正高は他にも、親戚づきあいなどで板挟みになるポジションとなっており、ナレーションというわかりやすい手段があるという理由だけではなく、心労が視聴者に伝わってきます。

 

ですが、この涙ぐましい気づかいの数々も、視聴者のみに聞こえる"声"という形、或いは一人称視点的なカメラワーク、彼の目にだけ映るSnow、といった形で表現されたように、家族の誰一人に対しても満足に伝わっていません。

それどころか、彼が気づかいのためにした「何もしなかったこと」が責められ、その癖家族はどうでもいいことにばかり気づき、小言を並べてきます。(積み重なります)

 

f:id:yama51aqua:20170806030648p:plain

 

あっパパ、そのグラス使わないでって何回言えばわかるの?

 

 

 

 

 

そして先ほどの動画のシーン。

f:id:yama51aqua:20170806030921p:plain

ぷっちーん。

(本人は本気でぷつんと切れてしまったのに、他の二人にはどこ吹く風というのが伝わってくるカットで好きです)

 

 


 

心の距離感もうまく表現されていますね。冒頭の電車の話に例えるなら、正高は「座ることを遠慮した」ことに気づかれず、なにも出来ない無能の烙印を押され、立場も、心の居場所もなくなっていきます。(1話で、正高のコネの面接にカホコが落ちてしまったというのも、ある意味象徴的なエピソードです)

 

その冒頭のツイートに関しては、こんな引用ツイートが来ていました。(togetterにもあります)

 

 

 

 

 これはある意味その通りで、「声を出さないと通じない」というのはある意味真理です。正高の場合もある意味そのことは自覚していて、ドラマの中では1話から4話まで毎回しつこいくらいに、心の声ではなく「もし、実際に正高が声をあげていたら」のIFストーリーが挿入されています。

(ただ、「評価されたい」というよりも「よっぽどみんなのために行動しているのに気づかれない」→(この場合)「責められる」ということがかかれています)*3

 

 

 

 

そしてこのシーンは、先ほどの麦野とカホコのシーンに対応しています。

 

 

麦野の心が動くのは、カホコが「言わなくても良いこと」「普通は言わないこと」をまっすぐ麦野に対して伝えるからです。言葉にすると伝わる、ということが描かれています。

f:id:yama51aqua:20170806033428p:plain

 

そしてカホコは麦野を「家族以外にも自分を必要としてくれる人」だと感じ「生きてていいんだよって言われてる」と自己肯定感を得ます。1話でカホコは自分で「愛されてる」と言っていますが、それは親戚・家族からの愛情です。カホコは自分で愛されていることを全く疑ってはいませんが、それでは「生きてていい」という感情になりません。「家族以外の人」からの肯定を受けることが「生きてていい」と感じることになるということが逆説的に示されています。

 

 

これを踏まえると悲惨です。正高は「言葉にすべきだったこと」を「言わなかった人」として描かれ、その結果大きな断絶が生じてしまっています。更に家族からは「空気のように」扱われています。「必要としてくれる」の対極です。そして「家族以外の人」からの肯定が必要なのに対し、正高は「家族からの肯定」すらも得られていません。地獄です。*4

 

なにより悲惨な描かれ方をしているのは、この正高(と泉、あるいは家族の関係性)が、カホコの見つけた「愛」の末路だということです。3話でカホコは「どうしてパパはママを好きになったの?」と尋ねています。これはカホコの麦野への愛と、正高の泉(あるいは家族)への愛が対応していることを示しています。正高はせめて泉に肯定されていれば救いがあったのですが、残念ながらそうではありませんでした。

そして更に悲惨なことは、そのまた末路もドラマの中で描かれているということです。カホコの祖父母家(平泉成・梅沢昌代・浜田マリ)家はカホコ家よりも更に悲惨に描かれたばかりです。(騙されて300万の借金を抱えたばかり)ドラマの中でも父親(正高)が「わが家の30年後の姿」と言っています。

 

極めつけに酷い*5のは、このカホコと麦野のシーンのあとに、先ほどの正高が叫ぶシーンが来ることでしょうか。上げて落とす、みたいな感じですね。カホコはエンターテインメント部分(カホコと麦野)が明るく作られているぶん目立ちませんが、やはり遊川和彦らしくて面白いです。*6

f:id:yama51aqua:20170806043912p:plain

 

 

 

 

 

唯一の救い(?)*7

 

さて、という訳でこの先この家族の再生が描かれるはずです。(サラッと流されてしまうかもしれませんが)

先ほど例に挙げた「家政婦のミタ」でも父親について描かれたのは前半部分だったので、次回の5話あたりで一旦このあたりは解決に向かうのかと。後半は遊川さんはもっと大きなものを描いてしまう傾向があるように感じているので、個人的にはとりあえず来週あたりがオススメといったところでしょうか。ただ、カホコは(これまでの反省もあってか)*8非常に明るく作られていると感じるので、是非後半・或いは結末もそういうものであったら良いと思っています。

 

さて、麦野はカホコの言葉に動かされたといいましたが、ではカホコを動かしたものはなんだったでしょうか。それは麦野の言動もあったのでしょうが(竹内涼真が素晴らしいのでそういうふうに見えてしまいますが)それだけではなかったでしょう。

 

 

f:id:yama51aqua:20170806042205p:plain

 

この4話においてもカホコを動かしたのは麦野の書いた絵でした。これはずっと一貫しています。麦野がカホコの言葉に動かされたとしたら、カホコは麦野の絵、つまりは言外のものに揺さぶられています。麦野が描いて来たものは「寝ているカホコ」「演奏している糸(久保田紗友)」「頭を下げている父」の絵で、どれも言外の行動をしている絵です。*9言葉にせず失敗した父ですが、言葉ではない姿で思いを伝える姿がここに描かれていて、これが救いになれば良いなと思っています。このあたりが掘り下げられてくると、非常に楽しみとなってくるところです。

 

 

 

 

 

 

 

というわけで、「過保護のカホコ」4話の感想でした!久々にドラマの更新をしたので疲れた!充希は最高だし、涼真くんは良すぎるので、次回もわーきゃー言いながら観ようと思います。

 

 

*1:GPSやSnow的演出、あまりはまってないと思うけど若者への興味なのだろう

*2:わが家の父親もこうなってしまっているときがあるので尚更リアリティーを感じた。お父さんごめんなさい

*3:こういうこと てつ☆ぱち!@A君(17)の戦争ロス on Twitter: "位置取りが下手な野手がファインプレー連発してるように見えるあれだ https://t.co/Pv5UFEEfJK"

*4:1話などで会社での様子がありましたが、勿論「家族以外の人」からの肯定も得られていません

*5:酷い、悲惨、遊川和彦は好きじゃないと繰り返していますが、この記事は褒めていますし、このあたりも良いニュアンスで使っています。勿論。念のため。

*6:でも落ちたようには感じない。メインテーマではないからか。あるいは父親が阻害されているからかも知れない笑

*7:別に唯一のってことはなかったね

*8:流石に「純と愛」の評判が悪すぎる

*9:そりゃ絵なので当たり前か