べんきょうしよう

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【雑記】他人と歩く、ということ

人は旅に出る。人は旅行をする。

もしも休みが貰えれば、ちょっとヨーロッパにも行ってみようか。
 
私は海外旅行をしたことがないのだけれど、海外旅行というものを、羨ましく思っている。
「パリの街で、〜に入るのが日課だった」みたいな、海外旅行やホームステイ、留学などのことを思い返したツイートを見ると、とても素敵だな、と胸がきゅーっとする。
 
旅をすること、とは記録を残すことだと思う。
パリの街並み、ハワイの海、沖縄の海、京都の街並み、大阪の通天閣……。
今の時代、どんな場所も行かなくてもすぐに調べることができるし、どんな場所も知識だけなら、行った人よりも深くつけることが可能かもしれない。VRなどがこれから発展したら、行かなくても体験が出来るようになるかもしれない。
でも、旅に行くと、その街は、知らない街から、行ったことがある街へと変わる。それは、その街に初めて行った時や、体験したこと、感じた時の記憶を残すということである。
 
例えば一度パリに行ってしまえば、二回目に訪れた時、初めて訪れた時のことを思い出す。はじめての海外で不安だったこと。道もわからなくなって言葉も通じなくて不安だったけれど、なんとか身振り手振りで伝えたら、伝わったこと。その後に食べた夜ごはんに、信じられないくらい感動したこと。再びその街を歩いたときに、その時の感情が、その時の空気やにおいと共に思い出される。それは、その街に記録を残すということだ。
 
私はまだ海外に行ったことがないから、旅ものエッセイを読んで、気を紛らわせている。行けば良いのにね。
 

 

 

 

from everywhere. (星海社文庫)

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特に海外旅行などの強いインパクトを持つ、文化的、物理的にも距離の離れた場所へ行く旅行は、嫌でも街に記録を残す。国内旅行でも、旅の中で特殊な経験や体験をしたり、感じたことがあれば、それはしっかりと記録になる。けれど、普段歩いている街や、駅や、道は記録になりにくい。その街を離れてしまった時に、大きな時間の集合体として、記憶に思い出されるだけだ。
でもそれはひとりで歩いた場合で、もしかしたら平凡な道や街でも、「他人と歩く」ということは、それが例えば散歩や小旅行だったとしても記録に残す、ということになるのかもしれないと思ったりもする。
 
浮間舟渡という街がある。赤羽の隣にある、ギリギリ東京都、ギリギリ埼玉ではないところにある街だ。とても退屈していた高校生の私とその友人の鈴木くんは、ある休みの日にちょっとどこかへ行こう、と言って向かう先も決めずに集まった。そして都区内きっぷというのを買った。そのきっぷは、東京都のJR線ならどこでもそのきっぷだけでいけるというものだった。北千住、赤羽、蒲田、新橋、渋谷、県境や路線の境として、印刷されてある駅の名前。なんとなく知っている駅の名前たちの中に、浮間舟渡、彼はひとり異質な空気を醸し出しながらそこにいた。
鈴木くんが「なんて読むの?浮間舟渡?……ってどこ?」と言った。そうして私たちの行き先は決まった。
到着した浮間舟渡という街は、思い入れさえなければ、特筆することのない街だった。江戸川沿いに、団地が続いている。駅の近くにある公園に入ったら、何故か風車が立っていた。やることも特にないので、そのあたりを歩き何枚か写真を撮った。その後はどうでもいい話をしながら、河川敷をずーっと歩いていた。
浮間舟渡という街が、それほど魅力的な街かどうかは私にはわからない。けれど、鈴木くんが「浮間舟渡ってどこ?」と行った瞬間から、その街は私にとっては名前のない街ではなくなった。その街で風車を見てから、私の中には浮間舟渡の記録が残った。そのあたりを電車で通るだけで私はその散歩のことを思い出す。
 
もう少し普通の街でもいいのだ。私にとっては有楽町と京葉線東京駅のあたり、東京国際フォーラム付近のあたりは、初詣をするために待ち合わせをした場所だ。九段下駅のまわりの道は、ファミレスで打ち合わせをしたあと、なにもまとまらないでぐるぐると歩いた道だ。誰かと一緒に行った場所は、記録になる。他人と歩くということは、記録を残すということだ。その人との記憶や、思い出やにおいを残すということだ。初めての恋人と行った喫茶店。サークルのあと、何故かお酒を飲んで歩いた駅までの道と駅からの道。中学生の頃、何故かそこでずっと止まっていた歩道橋の上。恋人にふられたなんでもないチェーンの居酒屋。他人と歩くということは、名前のない場所を減らしていくことだ。また行きたい場所や、行きたくない場所を増やすことだ。行くたびに何かを思い出す場所を増やすことだ。全部が特別な場所になっていく。知らない場所が減っていく。これからもそうやって生きていくのだと思う。

 

 

 

深夜特急〈1〉香港・マカオ (新潮文庫)

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